がんばれコンサルタント！ 第527話：コンサルタントが必ず押さえておくべき「回帰不能点」

「ゴトウさん、この前クライアント先で妙な人事がありましてね、どうにも気になってしょうがないんですよ…」── 親しいコンサルタント仲間で一杯酌み交わしていた時に出てきた話題です。

なんでも、２代目の経営者が色々と動き始めたまではよかったのですが、そのことで営業の担当が結構入れ替わったというのですが、単なる配置転換とはどうも違うため、気をもんでいる…とのこと。

会社の置かれている環境は、刻一刻変わっていっているため、「同じ人員で同じ仕事が何年も続いている…」としたら、これは「危険な状況が毎日のように積み重なっていっている」と思って間違いないでしょう。世の中猛烈に変わっていっているのに、自社だけに風一つ吹いていない…ほうが、どうかしているからです。

そういう意味では、何かしら手を打つということ自体は「失敗してでもチャレンジしていく」ことに、大きな意義があると言えます。当たり前ですが、動いていないと、そしてチャレンジしていないと、絶対に大きな成果を得ることは不可能だからです。

しかし、動くこととそれ以上とも言える重要な押さえるべき点があります。それは、「回帰不能点」はどこか…ということです。分かりやすく言えば、その点を越えてしまうと、もはやどうにもしようがなくなるギリギリ戻ってこれるポイントを把握しているかどうか…ということです。

会社を創業した経営者本人が、まだ若くて元気があり、陣頭指揮も含めて何でも把握していて、さらに言えば失敗してころんでも「ナニクソ！」と奮起してまたゼロからスタートできるような場合なら、ある意味何度でもやり直しはききます。そう、ナニクソ！で奮起してゼロからでもリスタート…とは、まさに回帰だからです。

一方で、創業社長も年老いて、二代目や三代目が経営というよりは管理思考で事業が伸びていないような場合、放っておくと１０年経っても２０年経っても、時が止まっていたかのように社員はそのまま年老いて、事業内容もそのまま…というようなことが実際に起きてきます。

起きていることの実態とは、年々微減で少しずつ小さくなっていっている…という状態。過去の資産があるので急に食べられなくなるということがないだけに、誰も奮起せずに毎年少しずつ小さくなっていくのを何年も繰り返すのです。

この結果起きることは、若い社員が入ってこない、入ってきても定着しない。教えようにも教える人がいない、教え方も分からない…ということが起きます。会社における回帰不能点はまさにここに潜んでいたりします。

会社組織において、最も重要なことは、「どうすればお客様を開拓し、増やしていくことができるか」を自社の場合における「考え方」と「具体的な施策」の両面を押さえて、これを次の人材に教えることができなくなったとき、確実に成長は止まることになります。

成長が止まるだけならまだいいでしょう。実際に起きることは、回帰すべきところに帰れなくなったことから、長期ジリ貧が始まります。未来を考えて、ほぼゼロからつくりだす人材が自発的に発生することがない限り、この傾向は続きますが、それがいかに厳しいことかは誰にもわかることに違いありません。

商品開発でも新事業でも、それを考え、手を打ってきた…、そのことを教えて次の代につなぐことができなくなれば、それまでの特徴や色、らしさ…といったものは確実に途絶えることになります。これらが同時複合的に起き始めると、どれだけ不採算部門を切ってリストラして…をしても、単に腐った部位を切り捨てているだけで、健全な体質や成長に戻れるかと言えば、答えは残念ながらノーとなります。

担当者や担当長が替わることはビジネスにおいてよくあることですから、それらは問題ありませんが、その会社がビジネスできている構造や仕組み、またそれらを「つくりだしたり改良できる人」「次の代に教えられる人」は一体誰なのか…。もしここのキーマンが消えればどうなるかとういうことこそ問題なのです。

新たな仕組みや構造をつくりだすためにはどうすればいいのか。売上や利益、在庫をどれだけ見ていても絶対に分からない世界があるからこそ、仕組みづくりができるコンサルタントが本領を発揮するステージがあると言えるでしょう。

単なる延命ではない、本質的な成長の礎をつくる。あなたの活躍が待ち望まれています！