がんばれコンサルタント！ 第687号：海外企業が日本の若者の採用を避けているという話に対する考察

「ゴトウさん、日本のサラリーマンって世界でどうなんですかね？」── 先般、コンサルタント仲間と楽しく一杯やっていた時にでてきた話題の一つです。

なんでも最近、SNSで目にした海外での話題で、企業の人材採用において、日本人の若者を避けている…というショッキングな話がことの発端です。驚くべきは、その理由が「要求が多くて働かないから」というもの。

ご存じの方も多いと思いますが、ひと昔前には「日本人は働きすぎ！」と、年間労働時間の長さが国際的に問題視までされ、強制的に労働時間を削減する施策が必要とされた時代から考えれば、まるで天地が逆転したかのようです。

ここには単なる偏見だけでなく、社会全体の構造や若者世代の労働観の変化が映し出されているように思えてなりません。

もちろん、これは一部の極端な例に過ぎないのかもしれません。しかし、世の中の空気というものは、案外そうした“端っこの話”からにじみ出てくるということも事実だったりします。

自分の周囲だけを見て「変わらない」と安心していると、気がついたときには世界はすっかり変わっていた…ということもありえるのです。

ちなみに、先日米国企業の経営者の方と会話をしていた時に印象的だったのが、「９時５時」という言葉でした。いわゆる9時出社、5時退社の8時間労働を指すのですが、アメリカでは7時4時や6時2時といった「早出早上がり」型も珍しくないとのことでした。

クルマ社会という事情や、仕事終わりに一杯が無い…といった地域性や文化的背景が異なることもあるでしょう。

しかしここで興味深かかったのは、８時間勤務とは「８時間は純粋に仕事時間」であるという点。昼食や休憩は勤務時間外にカウントされるため、結果として１日の出社から退社までは９時間前後になるのです。そう、７時から夕方４時は９時間なのです。

全米で一律にそうだとは言いませんが、考え方の大きな違いは明らかです。日本では「勤務時間＝拘束時間」と捉えられることが多く、副業禁止や私用制限もその延長線上にあったりします。

対してアメリカでは「仕事以外の時間は自由」という大前提があり、副業なんて当たり前だし、それを禁止できる理由もない。それが多様な働き方や独立志向を後押ししています。

これが何を意味しているのか…。語弊を恐れずに申し上げれば、日本の場合、「人身契約」と言ったほうが状況の理解が早いでしょう。実際、ひと昔前まで、「終身雇用」という単語が当たり前のように使われていましたし、「ご奉公」なる言葉も使われ、会社に身を捧げるということが、ある種当たり前のように言われていました。

もちろん、「だから雇用を守っている」という考え方とセットで存在したことも事実でしょう。しかし、それを「権利として行使」するのを当たり前と思っているとしたら、時代が変わっているにも関わらず気づかなければ、「極めて一方的」になりかねない訳です。

良いも悪いも、世の中ビジネスは、少しずつ「世界標準」に変わっていきます。日本のやり方が少なからず残ったり、独特な風習も多少残るでしょう。しかし、１００年前はおろか、数十年前からみれば、驚くほどビジネスは世界標準に近づいていっていることは誰の目にも明らかです。

その会社の変化の割に、いつまでも「会社に守ってもらう」というような、働く側の意識の変化のスピードが遅いのが実態なのかもしれません。仕事そのものが「能動的な価値創造」ではなく「生活保障の手段」だったり。。

言うまでもなく、自分の人生は自分でしかつくれません。自分の願う仕事や生き方を考えるには、最終的には自らの意思で動かすことが求められます。

たかが昼食、たかが休憩時間。しかしそこに考え方が現れていたりします。
あなたは今、自分の仕事やビジネスを本当に自分の意思で廻していますか？