がんばれコンサルタント！ 第694号：コンサルタント起業において最も重要な要素

「ゴトウさん、はひ？ あれ？ 声が…」── 先日、コンサルタント起業をするために目下必死に活動を開始している方が、人生初のセミナー登壇するというので、ちょっとお邪魔してお声がけした際の、返ってきたお言葉です。

返ってきた声が、明らかにかすれていたので、セミナー当日だけに心配になって、思わず「風邪ひきました？？」と聞いてみたのですが、スグに手を振って「大丈夫です…？！」のサインが。

いやいや、全然大丈夫な感じがしませんが…？ 笑。「極度の緊張」で喉がひっかかって声が上ずったとのこと。しばらくして元の声に戻り、ホッと胸をなでおろしました。

伺えば、「セミナーのことを考えていたら、昨日は全然眠れなかった…」とのこと。緊張度MAXというのが、ヒシヒシと伝わってきます。

セミナー会場には４名の経営者の方がいらっしゃっています。初陣としてはこれ以上ないほど恵まれた環境かもしれません。というのも、セミナーというと、大人数の講演会的な感じをイメージする人も多いのですが、経営者が３社、４社も集うのは、コンサルタントのセミナーの世界では相当に貴重なことだからです。

この初陣のコンサルタントの方は、お勤め時代に人前でプレゼンなどはしたことがあったそうですが、それとこれはまったくの別物。

いざ「自分の商売」として臨むとなれば、いかに違うかは体験してみれば分かる…とはこのこと。まさに「声が出なくなる」ほどの緊張。しかも、今回はそのデビュー戦。全身で「プロとしてのスタートライン」に立った瞬間とも言えます。

登壇時間は３時間あります。気合も入っているせいか、「ゴトウさん、時間が足りなくなったらどうすればいいですか？アレもコレも伝えたくて…」とのご心配に、「時間が足りなくなった人はめったにいないので気にしないでいいですよ…」とお伝えしていました。

実のところ、初めて間もない方で、時間が余る人は居れど、足りなくなった人というのは一人も居ません。それがどういう意味か…ですが、はたせるかな、やはりそれが起きてしまいました。「かなりの時間があまった状態」で話すことが尽きてしまったのです。

さあ大変…というところですが、質問時間や個別に話を伺うなどをして、なんとか凌ぎます。それでも終了予定時刻まではまだ時間があったのですが、無理に引っ張っても仕方がないので少し早めに終えることに。社長さんたちの時間はとても貴重だから…という判断からです。

これで終了となった途端、終始無言で座られていた社長さんが、すっと登壇したコンサルタントの方のほうに詰め寄っていったのです。思わずクレームか？と一瞬身構えるようなタイミングでした。

しかし、その社長さんの手には用紙が２枚。なんと「申込書」でした。スグに来てほしい、と。その瞬間、「えっ？！、あっ、はい！ ありがとうございます！」と、またも上ずった声。

人生初のコンサルティング受注の瞬間です。こうした場面に立ち会えたことは本当に嬉しい限りです。思わず熱くなるものがありました。まさに努力が形になった瞬間です。

正直、お世辞にも出来栄えのいい素晴らしいセミナーとは言えません。説明もまだまだ改善の余地があり、反省すべき点は山ほどあります。

しかし、社長さんが申込書と一緒に手渡したもう一枚の用紙──アンケートには、こう手書きされていたのです。「話は下手だが、話の中身や実績がよい」と。これが社長。何にも迎合することなく、己の目と心で人を見て、判断をする。

どれだけ話が巧みでも、どれだけ資料が美しくても、「この人に頼みたい」「この人なら信頼できる」という最も重要な部分に「〇がつかなければ受注はありえない」のです。

技術ではなく“本質”が届いたときに、人は心を動かされ、契約が生まれます。コンサルタントにとって最も重要なのは「信頼される中身」と「頼みやすい形」に仕上げておくことなのです。

プレゼンテクニックや演出力よりも、まず「何を伝えるべきか」「どうすれば相手の心に届くのか」。コンサルティングを体系化したからこそ、この問いに真正面に応えられるのです。この根本を見誤ると、どんなに時間をかけても結果は遠のきます。

あなたのやってきたことを、本当に活かせる“カタチ”にする。これこそが、コンサルタント起業の最初にして最大の要です。

どんなに不格好でも、本物は伝わる。あなたの誠実な声が、多くの会社の未来を変えます。
次はあなたが活躍する番です。あなたの飛躍を応援します！