がんばれコンサルタント！ 第691号：コンサルタント商売を確立させるための絶対条件

「ゴトウさん、社長のことわかっているつもりだと思っていたけれど、全然わかってなくて…」──
先般、かれこれ10年くらい前から何かと応援頂いているお会社に、コンサルタント仲間とご一緒して、楽しく一杯やっていたときに先方の社長さんから出てきたお言葉です。

社長さんが「社長のことをわかっていない…」というのには訳があります。それは、１年ほど前に先代の社長さんから交代したからというのが理由があるからです。

先代は創業社長で、現社長はその右腕として、長きにわたり二人三脚で３０人弱の会社にまで成長させてきたという間柄です。いわば「戦友」のような存在であり、誰よりも近くで社長の決断を支え、喜びも苦しみも共にしてきた方と言っても過言ではありません。

実際、３人で食事＆お酒をしていたときにも、酒場で経営談義でヒートアップなんてことはザラで、それだけいつも真剣に互いに信頼し合って仕事をしていた…という証拠です。

だからこそ、その現社長の「わかっていなかった…」という一言には、単なる謙遜ではない深い実感がにじんでいました。

元常務だった現社長さんいわく、「ずっと社長の傍でいつも一緒に仕事してきてたんだから、社長や社長の仕事はわかっていると思っていた」…。

ある意味当然の想いでしょう。事実上、一緒になって会社をつくって大きくしてきた方です。経営判断の流れも、現場の動きも熟知している。だから「社長のことは何でもわかっている」と思ってしまうのも自然なことです。しかし、「理解している」と「同じ場所に立つ」のとは、似て非なることなのです。

それは悲しい出来事によって露呈しました。一年半ほど前に先代が急逝されたのです。そして急遽社長になられたのが現社長という訳です。その瞬間、全てが変わりました。守られる立場から、守る立場へ──立場が変わるだけで、景色もまったく違って見えるようになったのです。

「わかっているつもりだと思っていたが、全然わかっていなかった…」とは、この一年半を振り返られての率直なお言葉に違いありません。経営とは、机上の論理ではなく、日々の決断と孤独の積み重ねです。

「決断を促す立場」だったのが、「決断しなければならない立場」に。言葉で書けば大した違いはありませんが、実際にその立場になれば、これは天と地の違いです。さながら「心臓がドキドキしますよね」というのと、「自分の心臓がドキドキする」のとでは、まるで違うのと一緒です。

実は、コンサルタントとして活躍を願って当社にお越しになられ、しばらくして本格的に会社を設立してコンサル商売を開始された方も、似た言葉を発されます。いわく、「社長さんのことを、全然わかっていなかった…」と。

自分も独立して小さいながらも会社の代表になってはじめて、商売うんぬん、ビジネスうんぬん…のはじっこがようやく皮膚感覚でわかるようになった…。数字の理屈や理論ではなく、目の前の一つの契約、一つの支払い、一つの決断に「生きた実感」が宿る。それが商売の本質だからです。

なにか計算や経営分析したり、マーケティングがどうの、売り方がどうのとか、そういうのでは到底説明がつかない、もっと心臓がバクバクしたり、感覚的にドロドロしたものがわからなければとても商売なんてできるものではありません。

ひるがえって、自分がどこかに雇われていて経営者に意見するとか、安全な位置にいてわかったようなことを言うとしたら…。その言葉は、現実の厳しさを知らぬままの空論に過ぎません。経営者の立場に一度でも立ってみれば、「わかっている」と軽々しく言えなくなるのは、火を見るよりも明らかです。

長年経営者と二人三脚でやってきた苦労人の方でさえ、「わかっていなかった」というのは実に重い言葉です。

真にコンサルタント商売で活躍を考えるとき、大前提として小さいながらも自分が代表となっている商売をしっかりやっている必要があります。

どんなに大層な理論を語っても、自らの商売が立っていなければ説得力はありません。自らのビジネスをもたずして他人の商売を導くことなど、言葉は悪いですが、小学生に人生相談をするようなものです。

あなたは、「ビジネスの代表」になっていますか？
自分の商売を、他人の言葉ではなく、自分の言葉で語ることができますか？
次は、あなたがビジネスを始め、大いに活躍する番です！