がんばれコンサルタント！ 第683号：コンサルタントが必ず押さえておくべき、「心理的加速状態」の重要性

「ゴトウさん、やっぱり会社にしておいたほうがいいですか？」── アドバンスのグループコンサルティングの終了後に、近くの飲み屋さんで楽しく一杯やっていたときに出てきた話題の一つです。

なんでも、独立してからずっと個人事業主として活動していて、仲間に聞いたりネットで調べたりすると「会社にするのは年商〇〇万円以上から」といった話がよく出てくるのだとか。

いわゆる「法人成り」、つまり個人事業から株式会社にするかどうかという話ですが、重要なことは、こうした“経営の岐路”となる判断には、共通して押さえるべき視点が存在するということです。

それはズバリ、単に税金や経費などの損得ではなく、「心理的に加速するかどうか」です。制度的に正しいだけでは、飛躍は生まれないからです。

世の中では「答えは一つ」という思考が根強く、ビジネスの世界でも「こうなれば、こう」「正しいのはこっち」という断定的なフレーズがあふれています。

そんなに断定的には言っていない…という人でも、よくよく聞いてみれば、「損得」で判断していたりします。「こっちのほうが得」「それは損だから」などなど。

しかし、ビジネスにおける現実の判断は、違ってきます。誰に訊くかによって答えは変わるし、理屈上は正しかったり得だったりしても、逆を選ぶことも珍しくありません。もっと重要な判断軸があるからです。

実際、個人事業主やフリーランスの集まりで先の質問をすれば、「年収でいくら以上になるまでは会社にしないほうが得」といった答えが返ってくることが少なくありません。損得だけを基準にすれば、こうした判断が“当然”のように受け入れられるでしょう。

冒頭の方もまさにその影響を受け、法人成りを避けるどころか、ご丁寧に？！ 税金が増えるのを防ぐために売上自体を抑えていたといいますから面白いものです。本人的には「無駄な税金を払わないから効率的だ」と思っていても、現実は、「成長のブレーキを自分で踏み込んでいた」わけです。

こういうのは、ちょっとした会話で「あれ？」と気づけることがあります。冒頭の話の席では、既に10年以上ビジネスをしている経営者や実力コンサルタントがいたこともあり、「なんでそんなところでストップしているの？」と本気で不思議そうな顔をしたのです。

「それって、年収103万円の壁で働くのをセーブするのと同じ発想」という指摘は、まさに的を射ていると言えるでしょう。

ビジネスを伸ばしたいはずなのに、無意識にブレーキを踏んでいる──。それは、たとえ理屈や損得の上で正しくても、成長という観点から見れば完全な間違いなのです。正しい判断とは、「心理的に加速する環境や仕組みを、どう自らに組み込むか」にあります。

たとえば、法人成りをした瞬間に、顧客や取引先からの見られ方が変わるケースがあります。肩書や信用力が増すことで、これまで届かなかった案件の打診が来る。こうした外的な評価の変化は、経営者の行動量や決断スピードを一気に引き上げ、心理的加速状態を作り出します。

また、毎月の固定経費や報酬設計をあえて高い水準に設定し、「この水準を維持するにはもっと売上を作らなければならない」というプレッシャーを自らに課す方法もあります。背伸びをした環境に身を置くことで、自然とアクセルを踏み続ける状態が保たれ、結果として事業規模が加速度的に伸びていきます。

経営は速度や傾向値が命です。制度や数字の都合で減速や抑制するよりも、意図的に加速できる仕組みをどう選ぶか…。その選択が未来の成果を決定づけます。

あなたは、自分が心理的加速状態になれる場や仲間、環境に、意図的に足を踏み入れていますか？