がんばれコンサルタント！ 第680号：コンサルタントが押さえておくべき、「属性判断」における重要ポイント

「ゴトウさん、ようやくクライアント先の社長に納得してもらって進めていくことになりましたよ…」── 親しいコンサルタント仲間とビジネス談義をしながら、猛暑の夕暮れにビールジョッキで楽しく一杯やっていたときに出てきたお言葉です。

なんでも、クライアント先の社長さんに、少し先端的な方策を提案したそうですが、「ウチの業界はそういうのは…」と難色を示され、なかなか前に進めなかったのだとか。思わず、「ああ、また出ましたか」と笑い合ったのですが、こうした抵抗は案外よくあるものです。

最終的には納得してもらえたようで、今では急速に物事が進みだしているとのことで胸をなでおろしたのですが、こうした「妙なブレーキ」は、世の中いたるところに潜んでいますし、なにより、気づかぬうちに自分自身もその罠にかかっているかもしれない…のです。

特に気をつけなければならないのは、「自分はまともに判断している」と思っていたことが、あとから考えればまったく違っていた…というケースです。意外にも、こうした思い込みによる判断ミスは少なくありません。

その代表例が、「属性による判断」です。いわゆるラベリングであり、性別や年齢、業界、業種、年商、地域性などがこれに当たります。無意識のうちに「○○だからこうだ」と、属性から勝手にイメージを作り上げてしまうのです。

もちろん、属性というラベルそのものを否定するわけではありません。ラベリングがなければ世の中の区別も分類もできず、結果として不便きわまりない状態になります。醤油もコーラも一緒では、困るわけです。

重要なことは、属性とは、あくまでも“区分け”のためのものであり、“判断基準”ではないという点です。

ところが、多くの場合、この線引きを誤って使おうとします。「○○世代はこういうもの」「地方の企業はこうだ」「ベテラン社員は保守的だ」…など、属性と能力や姿勢を結びつけてしまうのです。

しかし、実際にはその結びつきに根拠はほとんどありません。「若い人はITに強い」と思い込まれがちですが、パソコンの基本操作すら危うい若手もいれば、80代で高度な分析をしている方もいるのです。

属性で一括りにしたがる理由は何か…。語弊を恐れずに申し上げれば、「そのほうが簡単に判断できると思っている」からです。端的に言えば、「〇〇の一つ覚え」と言っても過言ではありません。

事実、その思い込みと単純化によって、「〇〇＝こうだ」とほとんど無意識に思いこんで判断し、行動をしていたりします。

この“決めつけ”によって、どれだけの商機を逃しているか──。その影響は決して小さくありません。「ウチの業界には無理だ」「うちの規模では関係ない」と、見込みもなくチャンスの扉を閉じてしまっているのです。

本当は自分の側の工夫しだいで道が拓ける話をみすみす逃したり。「どうせ無理」とラベル判断してしまう。これは商売において致命的なミスです。とくに、これからのAIやロボティクスの時代は、あらゆる壁がなくなる時代です。思考の柔軟性こそが鍵を握るといっても過言ではないのです。

「自分の中に、勝手な思い込みの壁をつくっていないか？」──これは常に問いかけておくべきことでしょう。何か困難に直面したとき、属性てきなラベルに対してなのか、事実に対してなのか、厳かに判断する必要があります。

あなたの思考を縛っているのは、「事実」ではなく「ラベル」かもしれません。どこかに貼られたそのラベルを、自ら剥がして見直す勇気が必要です。

あなたは、ラベルを剥がして一歩を踏み出していっていますか？